サラリーマンがする不動産投資と節税

2025年6月17日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

不動産オーナーに特化した資産税のスペシャリストです。大手不動産鑑定士事務所と大手資産税税理士事務所において約15年の経験を有する私が最初から最後までしっかりとご対応させて頂きます。

サラリーマンがする不動産投資と節税

会社員(サラリーマン)の方が不動産投資を行う目的は、基本的には「家賃収入を得ること」にありますが、年収900万円以上の会社員の方については「節税目的」に行う意味もあります。

ここでは、サラリーマンの方が不動産投資をした場合について、給与所得の特徴や損益通算、メリット・デメリットに触れながら図解を用いて説明します。

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1.給与所得の特徴

給与所得の特徴

会社員(サラリーマン)の方は、通常、会社から「給与」と「賞与」が支給されます。所得税法ではこれらの給与や賞与を「給与所得」という所得区分にカテゴライズした上、確定申告をすることになります。

この給与所得には、次のような特徴があります。

  1. 総合課税方式
  2. 超過累進税率
  3. 給与所得控除
  4. 源泉所得税
  5. 所得金額調整控除

(1) 総合課税方式

所得税の課税方式には、大きく「総合課税方式」と「分離課税方式」の2つがあり、給与所得は総合課税方式に分類されます。

総合課税方式の特徴としては、次の2つの特徴があります。

  1. 総合課税方式による所得は、全て合算する。
  2. 総合課税方式による所得に赤字黒字が混在する場合は、一定の条件の下、互いに相殺(損益通算)する。

(2) 超過累進税率

超過累進税率とは、所得が大きいほど、課税される税率が大きくなっていく税率のことをいいます。

課税所得が100万円の場合は、課税所得の全てに対して5%の税率の所得税が課されます。

一方、課税所得が300万円の場合は、195万円までの所得に対しては5%の税率の所得税が課され、195万円から300万円までの所得に対しては10%の税率で所得税が課されます。

課税所得と所得税率(令和7年)

(3) 給与所得控除(令和7年以降)

給与所得控除とは、額面給与から控除することができる、サラリーマンのみなし経費です。

最低でも65万円の給与所得控除額があり、逆に最大で195万円の給与所得控除額しかない、というのが特徴です。

令和7年度以降の給与所得控除

(4) 源泉所得税

給与所得者は、給与額の全額を受けることができません。これは、給与や賞与の支給時に、会社が一定の所得税を天引きし、国に対して予納をするためです。

(5) 所得金額調整控除

年収850万円以上のサラリーマンの方は、最大15万円所得金額調整控除を受けることができます。

2.給与所得と不動産所得の損益通算

サラリーマンが不動産投資をすると、給与所得とは別に、家賃収入に基づく「不動産所得」が生じます。

ここで、給与所得と不動産所得はともに「総合課税方式」に分類される所得です。

したがって、不動産所得に赤字の金額があると、給与所得と赤字の不動産所得とを相殺、すなわち損益通算することができ、結果として、総合課税に係る課税所得が減少し、納税額が減少します。

不動産所得を損益通算しない場合とする場合の税額へのインパクトの例

上の表を例にすると、同じ年収1200万円のサラリーマンが、不動産投資をし、不動産所得が200万円の赤字になることで、納税額が約62万円減少することになります。

3.サラリーマンが不動産投資をする場合の4つのメリット

サラリーマンが不動産投資をすることのメリットには、主に次の4つがあります。

  1. 家賃収入(ダブルインカム)
  2. 節税とCF向上
  3. 税率差の儲け
  4. 必要経費の計上

(1) 家賃収入(ダブルインカム)

サラリーマンの方が不動産投資をすることのメリットは、何と言っても「家賃収入を得ること」にあります。

給与のほかに家賃収入がプラスされるので、生活にゆとりが出ます。また、家賃収入による不動産所得が給与所得を超えれば、FIRE(Financial Independence, Retire Early)をすることもできます。

(2) 節税とCF向上

前述の通り、不動産投資をし、不動産所得が赤字になると、その年の所得税と住民税の納税額が減ります。

特に中古不動産を購入した場合、最初の数年は減価償却費が多く計上されるため、手元に現金が多く残ります

この現金を再度不動産投資に充てたり、新たに投資信託で運用することで、CF(キャッシュ・フロー)が大きく改善されます。

(3) 税率差の儲け

高所得のサラリーマンの方が不動産投資をする大きなメリットとして「税率差による儲け」があります。

具体的には、①家賃収入に基づき生ずる「不動産所得」に対する税率と②不動産の売却益(≒譲渡所得)に対する税率との差が毎年の粗利に上乗せされ、儲けを生み出すことtなります。

(4) 必要経費の計上

不動産投資をしている方でしたら、一般社会通念に照らして、不動産投資をするに当たり直接必要となる支出は経費として認められます。

例えば、旅費交通費や新聞図書費、会議費、接待交際費、税理士報酬、通信費などのうち、不動産投資のために直接的に必要となった支出は経費として計上ができます。

4.サラリーマンが不動産投資をする場合の4つのデメリット

サラリーマンが不動産投資をする場合には、次の4つのデメリットに注意が必要です。

  1. 副業禁止
  2. 空室リスク
  3. 譲渡損
  4. 借入限度額

(1) 副業禁止

サラリーマンの方が不動産投資をする場合には、帰属組織の「社内規定」などに注意が必要です。

特に公務員の方は国家公務員法第103条及び地方公務員法第38条の規定に留意が必要です。

(2) 空室リスク

不動産投資は空室リスクとの戦いです。

空室が発生した場合、家賃収入は入りませんが、固定資産税などの経費は発生します。特に空室期間が長期化すると、不動産投資は途端に「金食い虫」となります。

借入をして不動産投資をしている場合は、家賃収入で借入金の返済ができなくなるため、給与や賞与から返済をしなければならなくなり、生活が困窮します。

給与や賞与でも足りなければ、貯金を取り崩して返済をすることになりますが、最悪の場合、生活が詰んでしまいます。

(3) 譲渡損

不動産投資の成功の是非は、出口戦略にあります。いくら家賃収入が良くても、売却価格が低く過ぎると譲渡損が発生し、家賃収入による儲けを吹き飛ばし、大きな損失が発生することになります。

特に高額所得者が前述した「税率差の儲け」を求めて不動産投資をする場合には、出口戦略が非常に重要となります。

代表者
代表者

経験的に、高額所得者については、家賃収入の大小よりも、出口戦略の方が重要な場合が多いと思います。

(4) 住宅ローンの借入限度額

不動産投資をするに当たりたくさんの借入をしていると、自宅を購入するための住宅ローンの借入限度額が低くなる可能性があります。

またその逆として、住宅ローンを組んでいると、不動産投資をする場合の借入限度額が低くなる可能性があります。

5.まとめ

サラリーマンの方が不動産投資をすることのメリットはとても大きいと言えます。特に高額所得者であるサラリーマンの方については、税率差の儲けも発生しますので、粗利30%を超えるような不動産投資をすることも不可能ではありません。

しかしながら、不動産投資には、空室リスクや譲渡損の発生リスクもあり、上手い話だけではありません。特に近年は不動産投資ブームが過熱しているため、不動産投資の利回りは下落しています。つまり譲渡損の発生リスクが相対的に高まっているということになります。

そこで、サラリーマンの方が不動産投資をする場合に事前にチェックするポイントをまとめますと、次の3点があると思います。

  1. 値崩れしにくい投資用不動産を購入すること
  2. 粗利の改善が見込める投資用不動産を購入すること
  3. 減価償却費を早く・多く計上できる投資用不動産を購入すること

相続タックス総合事務所では、いずれのポイントについても適切なサービスを提供しておりますので、ご希望の方はどうぞ弊所までご相談ください。

相続タックス総合事務所の代表は、大手資産税税理士事務所と大手不動産鑑定会社の両方で、計15年の経験を積んだ、この業界でも珍しい税務と鑑定評価の両方の実務経験がある税理士・不動産鑑定士です。

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