不動産投資における5つの利回り

2025年6月18日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

不動産オーナーに特化した資産税のスペシャリストです。大手不動産鑑定士事務所と大手資産税税理士事務所において約15年の経験を有する私が最初から最後までしっかりとご対応させて頂きます。

不動産投資における5つの利回り

不動産投資に当たって、まず一番初めに確認するのが利回り(利益率)です。利回りには、大きく次の5つの利回りがあります。不動産投資で特に重要な利回りは、NOI利回りと売却益や税金を考慮した投資利回り(税引後)です。

  1. 粗利回り
  2. NOI利回り
  3. NCF利回り
  4. 還元利回り
  5. 投資利回り(税引後)

ここでは、各利回りについて図解を用いて説明をします。

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1.粗利回り

粗利回りとは、投資価格に対する1年間の売上の割合です。表面利回りとも呼ばれています。

粗利回りを計算式で表すと、次のようになります。不動産投資では、一般的に家賃収入を購入価格で除して求めます。

(計算式)

粗利回り = 売上(家賃収入) ÷ 投資価格
(年利、単位:%)

また、不動産投資における粗利回りは、さらに次の2つの粗利回りに分けられます。

  1. 満室を想定した粗利回り
  2. 空室を考慮した粗利回り

(1) 満室を想定した粗利回り

満室を想定した粗利回りとは、言葉通り、仮にその不動産が満室で稼働した場合の粗利回りです。

不動産の流通サイトで掲載されている粗利利回りは、通常、この満室想定をした場合の粗利回りで、満室想定をした年間家賃収入÷売買価格で表されます。

(2) 空室を考慮した粗利回り

一方、実際に投資用不動産を購入し、賃貸して得られる粗利回りは、②の空室を考慮した粗利回りです。この空室を考慮した粗利回りは、(満室想定の年間家賃収入-地域の平均空室率を基に計算した空室損)÷投資価格、という計算式により計算されます。

代表者
代表者

稼働率が高い都心部では、満室想定粗利回り≒空室考慮粗利回りとなりますが、地方では、空室を考慮した粗利回りを把握することが大切です。

(3) 投資価格について

一般的に利回りを求める場合の分母である投資価格は、購入価格をもって投資価格としています。しかしながら、本当の意味でいう投資価格は、購入価格に購入手数料(仲介手数料や不動産取得税、登記手数料等)も考慮した価格であるべきです。

これを算式で表すと下記のようになります。簡便的には、投資価格=購入価格×1.07で計算しても良いかと思います。

本当の投資価格

投資価格 = 購入価格+購入手数料

2.NOI利回り

NOI利回りとは、投資価格に対する1年間の運営純収益の割合です。計算式で表すと、次のようになります。企業会計で言えばROA(Return On Assets)みたいなものです。

(計算式)

NOI利回り = 運営純収益(NOI) ÷ 投資価格
(年利、単位:%)

なお、運営純収益(NOI)は、運営収益(家賃・礼金等収入)から運営費用(維持管理費、水道光熱費、修繕費、広告宣伝費、租税公課等)を控除して求めます。

(1) NOI利回りの重要性

個人投資家が不動産投資をする上で重要な指標の1つにNOI利回りがあります。特に投資期間が5年~7年ほどの短期投資であれば、NOI利回りは特に重要な指標と言えます。

NOI利回りの計算例
NOI利回りの計算例

粗利回りは、維持管理費や水道光熱費、修繕費、管理費、租税公課、保険料などを考慮していませんので、粗利回りだけでは不動産投資をして、どれだけ手許に現金が残るかということが分かりません

また、マンション投資の場合、管理費や修繕積立金の金額が大きいため、粗利が良く見えてもNOI利回りは非常に低いなんてことも珍しくありません。

したがって、不動産投資をするのであれば、まずはNOI利回りを計算する必要があります。

(2) NOI利回りと借入金の金利

自己資本が少ない場合や投資効率を向上させたい場合には、金融機関から借り入れをして不動産投資をします。この場合、NOI利回りと借入金の金利の大小関係に注意が必要です。特別な事情が無い限りNOI利回り>借入金の金利である必要があります。

借入金利息を考慮したNOI利回り
借入金利息を考慮したNOI利回り

個人的には、借入をして不動産投資をするのであれば、支払利息考慮のNOI利回りを計算するのが良いと思います。

3.NCF利回り

NCF利回りの計算例
NCF利回りの計算例

NCF利回りとは、投資価格に対する1年間の純収益の割合です。計算式で表すと、次のようになります。不動産を長期保有する場合にはNCF利回りが重要です。

(計算式)

NCF利回り = 純収益(NCF)÷ 投資価格
(年利、単位:%)

なお、純収益(NCF)は、運営純収益(NOI)に、敷金等の一時金の運用益を加算し、更新費用や大規模修繕費(資本的支出)の1年分の積立相当額を控除して計算をします。

  • NCF利回りを求めるときは、運営費用に支払利息を計上しないように注意が必要です。
代表者
代表者

NCF利回り>還元利回りのとき、その物件の価格は安いと言えます。逆に、NCF利回り<還元利回りのとき、その物件の価格は高いと言えます。

4.還元利回り

還元利回りとは、一期間の純収益(a)から対象不動産の価格(P)を直接求める際に使用される率を言い、次の計算式で表されます。不動産鑑定士が不動産鑑定評価をする際に査定します。

(計算式)

還元利回り = a ÷ P
( a ≒ NCF、P ≒ 収益価格)

還元利回りは、キャップレート(CR)とか、投資家期待利回りともいわれ、一般的には、用途ごとに最も投資リスクの低い不動産のCR(基準CR)を基に、地域性や物件の個別性を考慮して、個々に査定します。

不動産投資に当たって、還元利回りを検討することは、通常ありません。

5.投資利回り(税引後)

投資利回りの考え方

個人の投資家にとって、不動産投資で一番大切な利回りは、この「投資利回り(税引後)」です。

この投資利回り(税引後)が他の金融商品の期待利回りを下回る場合は、その投資はやめた方がいいです。不動産投資をしないで、他の投資をした方が良いです。

代表者
代表者

高額所得者であれば年利20%以上は欲しいところです。

なお、投資利回り(税引後)は、自己資本に対する全期間の投資損益の総和で、次の計算式により計算をします。

(計算式)

投資利回り(税引後)= 全期間の投資損益 ÷ 自己資本 ÷ 投資期間(年換算)
(年利、単位:%)

※全期間の投資損益 = NCF ± 税金 ± 売却損益 - 売買手数料

6.まとめ

個人投資家にとって、投資利回り(税引後)を計算することはとても重要です。

弊所では、顧問サービスをご契約のお客様については、ご契約の範囲内で、NOI利回りや投資利回り(税引後)の計算をしております。また、投資物件の収集サービスも提供しております。

お仕事で忙しい方、不動産投資のノウハウが十分でない方はどうぞ弊所にご相談ください。

相続タックス総合事務所の代表は、大手資産税税理士事務所と大手不動産鑑定会社の両方で、計15年の経験を積んだ、この業界でも珍しい税務と鑑定評価の両方の実務経験がある税理士・不動産鑑定士です。

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