不動産の譲渡所得の金額の計算の実務

2021年11月18日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

不動産オーナーに特化した資産税のスペシャリストです。大手不動産鑑定士事務所と大手資産税税理士事務所において約15年の経験を有する私が最初から最後までしっかりとご対応させて頂きます。

不動産の譲渡所得の金額の計算の実務

不動産の譲渡所得の金額は「収入金額-必要経費(取得費・譲渡費用)」により計算をします。収入金額が必要経費を上回る場合には、その譲渡益に対して39%又は20%の税率で課税されますが、必要経費が収入金額を上回る場合には「譲渡損」となるため所得税や住民税の課税はありません。

この譲渡所得の計算で重要なのは取得費です。平成バブルの頃に取得した土地であれば、譲渡損が出るのが大半でしょう。

しかしながら、仮にバブルの頃に購入した土地であっても、取得費が分からない場合は、売却価格の5%を取得費とみなして課税されますので、納税額は大きくなります。このような場合には、弊所の「不動産取得費査定業務」をご依頼頂くことで、納税額を劇的に減らせることがあります。ご興味のある方はお気軽にお問合せください。

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相続タックス総合事務所(200)

相続タックス総合事務所は、不動産オーナー様に特化した税理士・不動産鑑定士・行政書士事務所です。

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1.不動産の譲渡所得の金額

譲渡所得の計算式
譲渡所得の計算式

(1) 譲渡所得の金額の計算

不動産の譲渡所得の金額は、次の譲渡所得のグループごとに、収入金額から取得費及び譲渡費用を控除して譲渡損益を計算します。一定の要件に該当する場合にはさらに特別控除額を控除します。

No課税種別保有期間による区分略称根拠条文
1分離課税長期保有分離長期一般資産措置法31条①
2分離課税長期保有分離長期特定資産措置法31条の2①
3分離課税長期保有分離長期軽課資産措置法31条の3①
4分離課税短期保有分離短期一般資産措置法32条①・②
5分離課税短期保有分離短期軽減資産措置法32条③
不動産の譲渡所得グループ

(2) 譲渡損益の通算

上記5つの各グループの譲渡損益(益と損)は互いに「通算」することができます。ただし、特別控除前の譲渡損益である点に注意が必要です。

例)長期所有していた店舗と短期所有していた駐車場を同一年に譲渡した場合の例

  1. 分離長期一般資産の譲渡所得(所有期間8年の店舗)
    譲渡損益=収入金額(2,000万円)-取得費(2,000万円)-譲渡費用(60万円)
        =▲60万円
    譲渡所得=譲渡損益(▲60万円)-特別控除額(0円)
        =▲60万円
  2. 分離短期一般資産の譲渡所得(所有期間3年の駐車場)
    譲渡損益=収入金額(1,000万円)-取得費(800万円)-譲渡費用(50万円)
        =150万円
    譲渡所得=譲渡損益(150万円)-特別控除額(0円)
        =150万円
  3. 損益通算後の譲渡所得
    イ 分離長期一般資産の譲渡所得
      0円
    ロ 分離短期一般資産の譲渡所得
      150万円-60万円=90万円

なお、不動産の譲渡損失は、次の2つのケースを除き、他の分離課税の譲渡益や総合課税所得とは損益通算ができませんので注意します。

  • 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
  • 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

2.収入金額

譲渡所得の計算式(収入金額)
譲渡所得の計算式(収入金額)

土地建物等の譲渡所得の計算における「収入金額」は、その年において収入すべきことが確定した金額をいいます。

  • 未収であっても、その譲渡代金の全額が収入金額となります。
  • 金銭以外の「物」又は「権利」その他の「経済的利益」を受け取った場合には、これらの時価相当額を収入金額に含めることとされています。

(1) 売買により譲渡した場合の収入金額

不動産を売買により譲渡した場合の収入金額は、原則として「売買価格」となります。ただし、同族会社や親族との間の売買においては、実務上、次の通り取り扱います。

  1. 同族会社との売買における収入金額
    イ 原則
      売買価格
    ロ 時価と著しく乖離する場合
      時価
      →時価と譲渡対価との差額は受贈益課税、給与所得課税などの問題が生じます。
  2. 親族間の売買における収入金額
    イ 原則
      売買価格
    ロ 時価と著しく乖離する場合
      売買価格
      →時価と譲渡対価との差額は贈与税の問題が生じます。

(2) 借地権と底地が併合した後に土地を譲渡した場合の収入金額の留意点

借地権と底地が併合した後の土地の譲渡
借地権と底地が併合した後の土地の譲渡

借地権と底地が併合され、その土地を譲渡した場合、旧借地権と旧底地を別々の客体として「所有期間」と「譲渡所得」を計算します。この時、旧借地権部分と旧底地部分とに対応する収入金額は次の通り計算することとなっています。

  1. 借地権者が底地を取得した後に土地を譲渡した場合の収入金額
    イ 旧借地権部分の価額 = A × B ÷ C
    ロ 旧底地部分の価額 = A – 旧借地権部分の価額
      A 土地の売却価額
      B 旧借地権の消滅時の旧借地権の価額(又は実際に支払った適正な立退料。ただし手数料等は除きます。)
      C 旧借地権の消滅時の更地価額
  2. 底地権者(土地所有者)が借地権を取得した後に土地を譲渡した場合の収入金額
    イ 旧借地権部分の価額 = A – 旧底地部分の価額
    ロ 旧底地部分の価額 = A × B ÷ C
      A 土地の売却価格
      B 旧底地の取得時の旧底地の価額(又は実際に支払った適正な底地取得費。ただし手数料等は除きます。)
      C 旧底地の取得時の更地価額

3.取得費

土地及び建物取得費
土地及び建物取得費

取得費とは、不動産の取得に要した金額と設備費及び改良費の額の合計額をいいます。ただし、建物については減価償却費相当額を控除した金額となります。

(1) 購入不動産の取得費

購入した不動産の取得費となる代表的なものを列挙すれば次の通りです。

項目備考
購入代金原則として「税込価格」により計算します。
不動産仲介手数料消費税等相当額を含みます。
立退料、移転料購入に当たり支払ったものに限ります。
購入契約書に貼付した印紙買主が負担した分に限ります。
登録免許税・登録手数料相続時又は贈与時に支払った登録免許税を含みます。ただし、みなし譲渡課税が行われている場合を除きます。
不動産取得税贈与時に支払った不動産取得税の額を含みます。
特別土地保有税平成15年以降に取得した土地については課税されていません。
建物取壊し費用当初から建物を取り壊して土地を利用する目的あることが明らかである認められる場合に限られます。
例)取得後おおむね1年以内にその建物の取壊しに着手する場合
その他取得のために要した費用・測量費、地質調査費、地盤強化費、造成工事費など
・所有権等を確保するために要した訴訟費用など
・使用開始までの支払借入金利子
・借入に当たり支払った公正証書作成費用、抵当権設定費用、保険料など
不動産の取得費の例
  • 業務の用に供されている不動産については、事業所得等の計算上必要経費に算入されるため、取得費を構成しないことに注意します。

(2) 交換や買換えなどにより取得した資産の取得費

交換や買換え、収容等により取得した不動産につき譲渡所得の課税の繰延べが行われている場合には、交換取得資産及び買換取得資産の取得費は、上記とは異なる計算方法により計算をしますので、注意します。

4.譲渡費用

不動産の譲渡費用とは、その不動産を譲渡するために直接かつ通常必要と認められる費用で、次に掲げるものなどをいいます。

  • 仲介手数料
  • 売却に当たり支払った登記費用
  • その他譲渡のために直接要した費用(印紙代、契約書作成費用など)
  • 立退料
  • 土地を譲渡するために行った建物取壊し費用
  • 既に売買契約をしていた不動産を、さらに有利な条件で他に譲渡するため、その契約を解除したことに伴い支出する違約金
  • その他その不動産譲渡価額を増加させるためにその譲渡に際して支出した費用

ただし、不動産を保有していた期間中に支出した修繕費、固定資産税等の維持管理費は譲渡費用とはならない点に留意が必要です。

5.特別控除額

譲渡所得の計算式(特別控除額)
譲渡所得の計算式(特別控除額)

(1) 不動産の譲渡所得の特別控除額の種類

不動産の譲渡所得の特別控除額は、その譲渡の態様によって、次のものがあります。

No譲渡の態様特別控除額(最大)根拠条文
1収用交換等により不動産を譲渡した場合5,000万円措置法33条の4
2居住用財産を譲渡した場合3,000万円措置法35条
3特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合2,000万円措置法34条
4特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合1,500万円措置法34条の2
5特定の土地等を譲渡した場合1,000万円措置法35条の2
6農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合800万円措置法34条の3
7低未利用土地等を譲渡した場合100万円措置法35条の3
不動産の譲渡所得に係る特別控除額

(2) 特別控除額の合算限度

同一年に複数の特別控除の適用を受ける場合には、その特別控除額の控除限度は合算して5,000万円までとなります。