不整形地の不動産鑑定評価

2021年9月22日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

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不整形地の不動産鑑定評価

不整形地の不動産鑑定評価は、評価対象となる土地が地域の標準的な画地と比較してどの程度劣るのかという点を具体的に検討しながら評価をします。

相続税の土地評価のような「かげ地割合に基づいた画一的な補正」をするのではなく、用途や地域性、土地の特殊性を考慮した上で、不整形地であることがどのように価格に影響を与えているのかを分析しながら、評価をします。

したがって、不動産鑑定評価によると相続税評価額よりも高くなることもあれば、低くなることもあります。仮に不動産鑑定評価額の方が相続税評価額よりも明らかに低くなるのであれば、相続税申告の際は不動産鑑定評価額によることが検討されます。

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1.不動産鑑定評価における不整形地

不動産鑑定評価における不整形地とは、長方形または正方形以外の画地をした土地をいいます。基本的に相続税の土地評価における不整形地と同様です。

ただし、不動産鑑定評価では、評価対象地(不動鑑定評価では「対象不動産」といいます)が不整形地だからといって必ずしも不整形地であることによる減価、つまり、不整形地補正をするわけではありません。

(1) 不整形地補正をしない例

不整形地補正を行う場合と行わない場合の例
不整形地補正を行う場合と行わない場合の例

例えば、市街地にある土地は一般的に整形地を標準的な画地として設定しますので、台形状の土地や旗竿状の土地は不整形地補正の対象となりますが、郊外の土地は地域における標準的な画地が既に不整形であることがありますので、このような場合には不整形地であることによる減価は必ずしも行いません。

(2) かげ地割合が同じであっても、不整形地補正の程度が異なる例

また、かげ地割合が同じであったとしても、道路や商業中心地との関係、土地の起伏・地勢の状態、日照の状態、隣接不動産との関係等に応じて、不整形であることによる減価の程度は異なります。

道路から離れるほど価値が低減するため、かげ地割合が同じであっても価値の違う土地
道路から離れるほど価値が低減するため、かげ地割合が同じであっても価値の違う土地

2.不整形地の不動産鑑定評価

不整形地(更地)の鑑定評価は、取引事例比較法を適用して求められる「比準価格」及び収益還元法(土地残余法)を適用して求められる「収益価格」を関連付けて決定することになります。

なお、更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいいます。

1.更地
更地の鑑定評価額は、更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする。再調達原価が把握できる場合には、積算価格をも関連づけて決定すべきである。当該更地の面積が近隣地域の標準的な土地の面積に比べて大きい場合等においては、さらに次に掲げる価格を比較考量して決定するものとする(この手法を開発法という。)。

  1. 一体利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地に最有効使用の建物が建築されることを想定し、販売総額から通常の建物建築費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格
  2. 分割利用をすることが合理的と認められるときは、価格時点において、当該更地を区画割りして、標準的な宅地とすることを想定し、販売総額から通常の造成費相当額及び発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を控除して得た価格

なお、配分法及び土地残余法を適用する場合における取引事例及び収益事例は、敷地が最有効使用の状態にあるものを採用すべきである。

不動産鑑定評価基準(各論)|国土交通省HP

(1) 取引事例比較法による比準価格

取引事例比較法による不整形地の比準価格の試算
取引事例比較法による不整形地の比準価格の試算

不整形地の比準価格は、不動産鑑定評価基準に従い「取引事例比較法」を適用して試算します。

具体的には、同一需給圏内に存する多数の取引事例から近隣地域の標準的な画地の比準価格を算出し、これに不整形であることを考慮した個性率を反映することで試算されます。このとき、不整形地であることによる減価の程度をどれだけ合理的に算出できるかが肝となるため、不動産鑑定士の腕によって差が出るところでもあります。

なお、公的評価において個性率の反映に際して使用される「土地価格比準表」では次のように不整形地補正率を設定しています。国税不服審判所や裁判所においても、これらの補正率を参考としている傾向があるため、これらの数値より大きな補正をかける場合には、十分な理論武装と実証的な資料の準備が必要となります。

地域普通やや劣る劣る相当に劣る極端に劣る
優良住宅地域1.000.930.860.790.65
標準住宅地域1.000.930.860.790.65
混在住宅地域1.000.930.860.790.65
農家集落地域1.000.930.85
別荘地域1.000.950.90
高度商業地域1.000.980.960.940.91
準高度商業地域1.000.980.960.940.91
普通商業地域1.000.970.930.900.87
近隣商業地域1.000.970.930.900.87
郊外路線商業地域1.000.970.930.900.87
大工場地域1.000.950.90
中小工場地域1.000.900.85
基準地が「普通」である場合と対象地が上記の場合とを比較した個別格差率(出典:土地価格比準表・七次改訂)

なお、不動産鑑定評価においては、間口狭小、奥行低減、奥行短小、奥行長大、不整形地であることによる減価は全て別々に考慮することとなっています。そして、個々の減価要因に基づく補正率を連乗して計算される値を個性率として使用しますので、不整形地であることによる減価が相続税の土地評価のように40%で打ち切りとなるようなことはありません。

(2) 収益還元法(土地残余法)による収益価格

収益価格は、評価対象地に最有効使用の建物が建っていることを前提に、建物及びその敷地の収益価格のうち土地に帰属する部分の価格を求めることで試算されます。

不整形地であることがどのように収益力の低下に繋がっているのかを具体的に、理論的に説明をすることが求められます。

3.相続税評価額と不動産鑑定評価額が異なる場合の例

相続税評価額は、原則として、画一的な評価方法である財産評価基本通達に従い評価をします。一方、実際の不動産の取引価格は、個々の不動産のあらゆる事情を考慮して決定されます。不動産鑑定評価においてもこれらの個々の事情を全て考慮して評価をするため、相続税評価額と時価(不動産鑑定評価額)は互いに異なる場合がほとんどです。

ここでは、東京都内に存する旗竿状の土地(路地状敷地のある土地)の相続税評価額と不動産鑑定評価額との違いを例示します。なお、東京都内に存する旗竿状の土地については、東京都建築安全条例第3条の2の制限を受けるため、高層の建物を建築することができません。

(路地状敷地の建築制限)
第3条の2 前条第一項に規定する敷地(路地状敷地)で路地状部分の幅員が4m未満のものには、階数(主要構造部が耐火構造の地階を除く。)(耐火建築物、準耐火建築物又は壁、柱、床その他の建築物の部分及び外壁開口部設備について知事が定めた構造方法を用いる建築物の場合は、4)以上の建築物を建築してはならない。

東京都建築安全条例より

不整形地の相続税評価と不動産鑑定評価の例
不整形地の相続税評価と不動産鑑定評価の例

(1) 相続税評価額

  1. 奥行価格補正後の路線価
    正面路線価(480千円/㎡)×奥行価格補正率(1.00)=480千円/㎡
  2. 不整形地補正後の路線価
    イ)不整形地補正率
     地積区分:A、普通住宅地区、かげ地割合:48.80%より 0.82
    ロ)間口狭小を考慮した不整形地補正率
     ㋑ 不整形地補正率(0.82)×間口狭小補正率(0.90)=0.738 →0.73
     ㋺ 間口狭小補正率(0.90)×奥行長大補正率(0.90)=0.81
     ㋩ ㋑<㋺より 0.73(>0.60)
    ハ)補正後路線価
     ①(480千円/㎡)×ロ(0.73)=350,400円/㎡
  3. 自用地としての価額
    (350,400円/㎡)×地積(365㎡)=127,896,000円

(2) 不動産鑑定評価額の例

最有効使用を長屋(共同住宅)の敷地として評価

  1. 取引事例比較法による比準価格
    イ)比準価格(単価)
     近隣地域の標準画地の比準価格(720千円/㎡)×個別格差補正率(32/100)≒259,200円/㎡
     ※個性率=間口狭小(90/100)×不整形地(40/100)=36/100
     ※不整形地であることによる補正率=(12m×2m×0.3+11m×31m×200%÷500%)÷365㎡≒40/100
    ロ)比準価格(総額)
     イ(201,600円/㎡)×地積(365㎡)≒94,600,000円
  2. 収益還元法による収益価格
    288,000円/㎡×365㎡≒105,000,000円
  3. 鑑定評価額
    ①・②を関連付けて、99,800,000円(273,000円/㎡)と決定

この場合には、不動産鑑定評価額が相続税評価額より3,000万円近く安くなるため、相続税の実効税率が30%であるとすれば約900万円ほど納税額が異なることとなります。

したがって、このような場合には不動産鑑定評価を利用した相続税の申告が検討されます。

まとめ

不動産鑑定評価の評価方法は「不動産鑑定評価基準」に記載されていますが、この基準は概念的なものであり、具体的な評価方法についてはほとんど記載されていません。公示価格や地価調査などの典型的な不動産鑑定評価は別として、特殊性の高い不動産鑑定評価を行うためには経験値とノウハウが必要です。

特に、不動産鑑定評価額を採用して相続税申告をする場合には、単に価格があるだけでは不十分です。なぜそのような価格になるのかを合理的かつ論理的に説明する必要があり、これには不動産鑑定士としての豊富な評価経験が必須であり、税務上の判断ポイントにも精通している必要があります。

阿部博行
代表者

弊所では不動産鑑定評価を利用した税務申告をいくつもしておりますので不動産鑑定評価を利用した申告にご興味のある方は、どうぞ弊所にご相談ください。

相続タックス総合事務所の代表は、大手資産税税理士事務所と大手不動産鑑定会社の両方で、計15年の経験を積んだ、この業界でも珍しい税務と鑑定評価の両方の実務経験がある税理士・不動産鑑定士です。

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