区分地上権に準ずる地役権とその宅地の評価

2021年9月4日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

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1.区分地上権に準ずる地役権

通行地役権
通行地役権
高圧線下地役権
高圧線下地役権

(1) 地役権とは?

地役権とは、民法280条に定める物権であり、一定の目的のために、他人の土地(承役地)を自分の土地(要役地)のために利用するために、他人の土地(承役地)に設定される土地利用権です。

(地役権の内容)
第280条 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。

民法|e-Gov

(2) 区分地上権に準ずる地役権とは?

区分地上権に準ずる地役権とは、相続税の課税対象財産となる「土地の上に存る権利の区分」の1つであり、次のような目的のため地下又は空間について上下の範囲を定めて設定された地役権で、建造物の設置を制限するものをいいます。

  1. 特別高圧架空電線の架設
  2. 高圧のガスを通ずる導管の敷設
  3. 飛行場の設置
  4. 建築物の建築その他の目的

なお、区分地上権に準ずる地役権として評価するか否かは、設定登記の有無は問わないとされています。これは、最高裁(平成10年2月13日判決)において通行地役権は登記なくして第三者にその権利を対抗し得ると判事した内容と整合させるためと考えられています。

区分地上権と地役権の違い

区分地上権と地役権は共に土地の上に対して設定される物権であるという点では共通しています。しかしながら、区分地上権が他人の土地の地下・空間に工作物を所有するために設定される権利であるのに対し、地役権は他人の土地の地下・空間を利用するために設定される権利である点に違いがあります。

なお、実務上は両者を厳密に区分しているわけではなく、例えば、高圧線下地に設定される権利としては、次の通り区分地上権と地役権のいずれもあり得ます。

  • 区分地上権の場合
    土地の上空に高圧線を所有するために設定
  • 地役権の場合
    土地の上空に電線路の施設及びその保守運営のための土地の立ち入り等のために設定

現実には、地主の承諾が得やすく、設定対価が低く(通常は設定時一括払い)、目的や制限行為などを細かく登記に記載することができる地役権の方が圧倒的に多く見られます。

高圧線下の土地に対して地役権が設定登記された全部事項証明書の例
高圧線下の土地に対して地役権が設定登記された全部事項証明書の例

2.区分地上権に準ずる地役権の価額

通行地役権
通行地役権

(1) 評価方法

区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の自用地としての価額に、区分地上権に準ずる地役権の割合を乗じて計算した金額によって評価します。

区分地上権に準ずる地役権の価額=承役地である宅地の
自用地価額
×区分地上権に準ずる
地役権の割合
区分地上権に準ずる地役権の価額の計算式

なお、宅地のうち一部に地役権が設定されているような土地については、その地役権が設定されている部分のみを単独の土地として捉え、その単独の土地部分の自用地としての価額に区分地上権に準ずる地役権の割合を乗じて価額を計算することとなりますので、注意します。

(2) 区分地上権に準ずる地役権の割合

区分地上権に準ずる地役権の割合とは、承役地である宅地の自用地価額に対する区分地上権に準ずる地役権の価額の割合をいい、次のいずれかの方法により求めます。

① 原則法

原則法は、その区分地上権に準ずる地役権の設定契約の内容に応じた土地利用制限率を基に、区分地上権に準ずる地役権の割合を求める方法です。

財産評価基本通達では土地利用制限率の具体的な算出方法を明示していませんので、各自が地役権の設定契約の内容に応じた合理的な土地利用制限率を算出することが必要になります。

原則法により求める例
通行地役権の区分地上権割合の査定の例
通行地役権の区分地上権割合の査定の例

例えば、上の図のB土地の一部にA土地利用者による通行地役権が設定されている土地があるとします。また、B土地は3階建ての店舗ビルが建ち並ぶ近隣商業地域内に存し、賃料水準や空室率を考慮すると、1階部分の価値が一番高く、2階、3階へと上がるにつれその価値が逓減するものとします。

この場合、通行地役権が設定されていることにより1階部分は建築の制限を受けますが、2階と3階は特段の建築制限を受けません。収益性を考慮すれば、1階を利用することができないことによる阻害率は約65%と査定されますので、この割合をもって「区分地上権に準ずる地役権の割合」として利用することが考えられます。

② 簡便法

簡便法は、区分地上権に準ずる地役権の割合を、その承役地に係る制限の内容の区分に従い、それぞれ次に掲げる割合とする方法です。

  • 家屋の建築が全くできない場合
    100分の50 又は その区分地上権に準ずる地役権が借地権であるとした場合に、その承役地に適用される借地権割合いずれか高い割合
  • 家屋の構造、用途等に制限を受ける場合
    100分の30

実務上は実勢価格を考慮しながら、上記①・②の方法のいずれかにより評価をすることとなります。

(3) 計算例(簡便法)

次の土地(B)は、普通商業・併用住宅地区に存する地積120㎡の宅地です。敷地の東端に北側に位置する土地(A)のために通行地役権が設定されており、1階部分につき建築物の制限を受けています。

区分地上権に準ずる地役権の評価①
区分地上権に準ずる地役権の評価

区分地上権に準ずる地役権の価額の計算例(簡便法)

  1. 奥行価格補正後の路線価
    正面路線価(65千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.97)= 63,050円/㎡
  2. 間口狭小・奥行長大補正後の路線価
    イ)間口狭小補正率 0.90 ∵間口2m+普通商業・併用住宅地区
    ロ)奥行長大補正率 0.98 ∵8m÷2m=4.0+普通商業・併用住宅地区
    ハ)①(63,050円/㎡)× イ(0.90)× ロ(0.98)=55,610円/㎡
  3. 自用地としての評価額
    (55,610円/㎡)× 地積(16㎡)=889,760円
  4. 区分地上権に準ずる地役権の価格
    イ)区分地上権に準ずる地役権の割合(簡便法)
      承役地の一部(1階)のみ建築の制限を受ける。 ∴100分の30
    ロ)区分地上権に準ずる地役権の価格
      ③(889,760円)× イ(30%)=266,928

3.区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の評価

高圧線下地に地役権が設定されている宅地
高圧線下地に地役権が設定されている宅地

(1) 評価方法

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額は、その宅地の自用地としての価額から上記3の方法により評価した区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって評価します。

区分地上権に準ずる地役権の
目的となっている
承役地である宅地の価額
=自用地としての価格区分地上権に準ずる地役権の価額
区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額の計算式

なお、敷地の一部に地役権が設定されている宅地の価額は、承役地である部分も含めた全体を1画地の宅地として評価した価額から、その承役地である部分を1画地として計算した自用地価額を基に土地利用制限率を基に評価した区分地上権に準ずる地役権の価額を控除して評価しますので注意します。

(2) 計算例

次の土地は、三大都市圏外に存する普通商業・併用住宅地区に存する地積1,200㎡の宅地です。敷地中央西側から北東側の上空には高圧電線路が設置されており、その線下地には通行地役権が設定されています。なお、当該高圧線の使用電圧は7万7千Vとし、線下地では爆発性可能性を有する危険物の製造取扱い及び貯蔵を禁止する旨の内容が登記されているものとします。

高圧線下に地役権が設定されている土地の例
高圧線下に地役権が設定されている土地の例

区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額の計算例(簡便法)

  1. 承役地の自用地価格の計算(地役権の影響が無いものとして計算)
    イ)正面路線価(30千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 30千円/㎡
    ロ)イ(30千円/㎡)× 地積(255㎡)= 7,650千円
  2. 区分地上権に準ずる地役権の価額の計算
    イ)正面路線価(30千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 30千円/㎡
    ロ)イ(30千円/㎡)× 間口狭小補正率(0.90)× 奥行長大補正率(0.96)= 25,920円/㎡
    ハ)ロ(25,920円/㎡)× 地積(51㎡)= 1,321,920円
    ニ)区分地上権に準ずる地役権の価格
     ㋑区分地上権に準ずる地役権の割合(簡便法)
      承役地の一部につき用途や建築の制限を受ける。 ∴100分の30
     ㋺区分地上権に準ずる地役権の価格
      ハ(1,321,920円)× ㋑(30%)= 396,576円
  3. 区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である宅地の価額
    (7,650千円)- ②(396,576円)= 7,253,424

4.高圧線下地の宅地の評価

地役権が設定されている土地の代表格は「高圧線下地」です。実務でもよく見られますので、詳しく内容を説明します。

高圧線
高圧線

(1) 高圧線とは?

高圧線とは電気事業者(東京電力や関西電力など)が供給する電気の送電線のうち、その電圧が7千V以上の「特別高圧」で送電される送電線のことをいいます。

電圧の種類
電圧の種類

(2) 高圧線地の利用制限

雷が良い例ですが、電気は電圧の大きさによっては空気をも通電します。そのため、感電による事故を防ぐため、特別高圧の送電線は一般の電線よりもかなり高い場所に設置され、さらに電線から一定の範囲内においては、工作物の設置や建築、用途や構造等が制限されます。

この利用制限については、送電線を通る電気の電圧が17万V以上17万V未満かによって制限内容が大きく異なります。

① 17万V以上の送電線の線下地の土地利用制限

17万V以上の特別高圧の電気が通る送電線下の土地(特別高圧線下地)については、その送電線の端から端までのエリア(A)と送電線から3m以内のエリア(B)については、工作物を設置・建築することができません。

17万ボルト以上の特別高圧線下の土地
17万ボルト以上の特別高圧線下の土地

したがって、評価対象地が17万V以上の電圧により送電されている電線路の線下地である場合については、その土地につき最低でも50%の評価減がなされることとなります。

② 17万V未満の送電線の線下地の土地利用制限

17万V未満の特別高圧の電気が通る送電線については、電線を軸に半径3m以内につき工作物の設置・建築の制限を受けます。逆に、それ以外の範囲については基本的に建築制限を受けません。

17万ボルト未満の特別高圧線下の土地
17万ボルト未満の特別高圧線下の土地

しかしながら、17万V未満の特別高圧線であったとしても、高圧線下地においては、建物の用途や構造、植物の生育等に一定の制限が課されることも多いため、地域の一般的な土地利用の状況等を勘案の上、30%の評価減等を検討すべきでしょう。

(3) 高圧線下地であること及びその制限内容の確認方法

高圧線下地であること及びその制限内容の確認は、次の順に行います。基本的には①で存在を確認し、②と③でその内容を確認し、具体的な制限内容を確認するために④・⑤の調査を行います。

  1. 航空写真、住宅地図による机上調査
    航空写真や住宅地図では高圧線が可視化されていない(又は見えにくい)ため、基本的には周辺に鉄塔があるかどうかの確認をすることで高圧線の存在を推定・特定します。Google Mapのストリートビューを見ることができるエリアであれば、ストーリービューにより上空に高圧線が通っているかどうかを確認できることがあります。
  2. 法務局調査
    承役地(高圧線が通っている土地)の登記簿又は全部事項証明書を取得し、乙区に区分地上権や地役権が登記されていないかを確認します。地役権図面がある場合は取得し、地役権が設定されている部分を確定します。
  3. 現地調査
    現地調査では、評価対象地のどこらへんに高圧線が通っているかを確認するとともに、その電線路を架設している周辺の鉄塔に行き、標識を確認します。標識には管理者の名称や電話番号、範囲などが記載されていますのでその内容をメモします。
  4. 土地所有者へ線下補償の内容や契約の有無の確認
    高圧線下地の土地所有者に対しては、線下補償料の有無や線下補償の内容を確認します。線下補償料については、毎年支払っているケースと設定時に一括して支払っているケースの2つがあります。契約書が残っている場合もありますので、その場合は写しを請求します。
  5. 電力会社へのヒアリング
    実務上は、④の契約書が無いことがほとんどで、契約当初の当事者が既に亡くなっている場合もあり、線下補償の内容が分からないことも多いため、基本的には電力会社又はその管理会社へ電話し、下記の内容を確認します。
    • 電圧(ボルト数)
    • 地役権設定の有無
    • 補償契約の有無
    • 最下線(最も低い電線)の高さ
    • 離隔距離(建築制限を受ける電線からの距離)
    • 建築における制限の有無