土地の時価の意義

2021年8月28日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

不動産オーナーに特化した資産税のスペシャリストです。大手不動産鑑定士事務所と大手資産税税理士事務所において約15年の経験を有する私が最初から最後までしっかりとご対応させて頂きます。

土地の時価の意義

土地の時価とは、ある時点における土地の適正な価格をいいます。

一般に土地の時価として認識されているものには、①実際の取引価格、②市場価格(マーケット相場)、③不動産鑑定評価額、④公示価格・標準価格(公示価格等)、⑤固定資産税評価額、⑥相続税評価額の6つの価格があります。

この記事では、一般に土地の時価として認識されている取引価格、市場価格、不動産鑑定評価額、公示価格、固定資産税評価額、相続税評価額の意義や相関性について説明しています。

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1.土地の時価

土地の時価とは、ある時点における土地の適正な価格をいいます。

(1) 土地の時価の種類

土地の時価
土地の時価

一般に土地の時価として認識されているものには、次の6つの価格(価額)があります。

  1. 実際の取引価格
    実際の売買価格、成約価格、売買実例価格など
  2. 市場価格(マーケット相場)
    不動産市場における売買相場、インデックス価格、募集価格など
  3. 不動産鑑定評価額
    不動産鑑定士が不動産鑑定評価書により報告する不動産の価格
  4. 公示価格・標準価格(公示価格等)
    国・都道府県がその年の1月1日又は7月1日におけるその地域の標準的な宅地の時価として定めた価格(公示価格・標準価格)
  5. 固定資産税評価額
    固定資産税評価基準に従い、固定資産税・都市計画税の計算の元となる土地の価格
  6. 相続税評価額
    財産評価基本通達に従い、相続税の計算の元となる土地の価格

(2) 価格間の関連性

上記6つの価格はそれぞれ別個独立しているものではなく、それぞれの価格間に一定の関連性があります。

  1. 実際の取引価格 と 市場価格
    実際の取引価格には個別的な事情が介在しているため、非常に高いものもあれば、非常に安いものもあります。これらの実際の取引価格を基に、統計的なインデックス価格や不動産仲介業者の感覚的な相場が形成されます。
  2. 実際の取引価格・市場価格 と 公示価格等
    実際の取引価格及び市場価格を基に、不動産鑑定士の鑑定評価額を標準として公示価格等が決定されます。
  3. 公示価格等 と 固定資産税評価額or相続税評価額
    公示価格等の概ね7割または8割程度の価格となるように固定資産税評価額または相続税評価額が決定されます。

(3) 価格の種類に応じた適正時価との関係

一般に「公示価格=時価」とされていますが、経験上、都心部の公示価格等は市場価格よりも低く、逆に地方の公示価格等は市場価格よりも高く設定されている傾向にあります。

公的価格と適正時価
公的価格と適正時価

地方では、歳入に占める固定資産税の税収割合(3割~5割)が大きいため、固定資産税の減収につながる公示価格や地価調査の価格を下げることに対して非常に消極的です。なぜなら、地価公示や地価調査の価格を下げると、地価公示や地価調査の価格だけでなく、地価公示や地価調査の周辺の標準宅地の評価額も連動して下がるため、地域全体の固定資産税路線価が下がり、結果として固定資産税による税収が大きく減るという構図にあるためです。

不動産鑑定士にとっても、3年に1度の評価替えの時期の固定資産税の標準宅地の評価業務は、数百万円~数千万円の大きな仕事のため、市町村に逆らってあえて適正時価を算出しようとする人は現実としていません。地価公示や地価調査の価格を設定するときも、市町村にお伺いを立ててから、公示価格等を決定するという地域すらあります。

このように、地方では、市町村と不動産鑑定士がある意味グルになっているため、公示価格や標準価格が下げ止まっている傾向にあり、そのあおりを受けて、相続税路線価も下げ止まり、結果として市場価格よりも高い相続税評価額の土地が生み出されているといわれています。

(4) 相続税の財産評価における土地の時価

相続税の財産評価における土地の時価は、原則として、課税時期における財産評価基本通達に定める評価方法により評価した金額(相続税評価額)として定義されます。

ただし、財産評価基本通達による評価額を採用することにつき著しい不合理性・不適当性が認められる場合には、次の価格も相続税の財産評価における土地の時価として認められる余地があります。

  1. 不動産鑑定評価額
  2. 実際の取引価額

2.実際の取引価格

実際の取引価格
実際の取引価格

実際の取引価格とは、不動産市場において実際に取引された価格を指します。相続税の財産評価においても、実際の取引価格をもって評価し得る場合があります。

(1) 情報提供元・情報源

売買契約書

(2) 信頼度

実際の取引価格は、市場で現実に取引された価格であるため、一定の要件を満たす場合には相続税土地評価においても「時価」として取り扱うことが可能です。

地方では、年に数回程度しか不動産取引が行われていない地域もあり、中には1年に一度も取引が行われていないような地域もあります。このような地域では、財産評価基本通達による評価額が現実の不動産市場における時価と乖離している可能性があり、そのような場合には、実際の取引価格をもって土地評価額とすることが検討されます。

(3) 留意点

実際の取引価格が正常であったとしても、取引当事者が特殊な関係にある場合などの場合は、適正時価として採用される可能性は

3.市場価格(マーケット相場)

インデックス価格
インデックス価格

市場価格とは、マーケット相場のことです。過去の売買実例価格を分析して統計的な価格として表示されるインデックス価格や不動産仲介業者の間で認識される相場価格などがあります。

(1) 情報提供元・情報源

  • 不動産会社からのヒアリング
  • 市場調査会社が作成したマーケットレポート
  • Web上に公表されている不動産インデックス

(2) 信頼度

不動産会社からのヒアリングやマーケットレポート、不動産インデックスは、実際の価格水準としては正しくとも、相続税財産評価における価格としては採用されることはありません。

4.不動産鑑定評価額

不動産鑑定評価
不動産鑑定評価

不動産鑑定評価額とは、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準に従い評価した不動産の価格をいいます。

(1) 情報提供元・情報源

不動産鑑定士から発行される不動産鑑定評価書

(2) 信頼度

不動産鑑定評価額は、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価に関する法律に基づき鑑定(評価)をしたその不動産の適正時価であり、一定の要件を満たす場合には相続税土地評価においても「時価」として認められます。

実際に売買をしていなくても適正時価を証明できるところにメリットがあります。

(3) 留意点

不動産鑑定評価額は、公的にも認められた信頼度の高い価格ですが、一方で、評価過程や評価方法に不合理性が認められたり、説明不十分な評価内容のある不動産鑑定評価額は税務当局より否認される傾向にあります。

阿部博行
代表者

代表の私は、大手不動産鑑定士事務所において、10年超のキャリアを持つ税理士・不動産鑑定士です。他の不動産鑑定士事務所に依頼した場合と比べて、税務署から否認されにくい不動産鑑定評価書の発行が可能です。ご興味のある方はぜひご相談ください。

5.公示価格等

公示価格と標準価格
公示価格と標準価格

公示価格とは、地価公示法に基づき、国が評価をしたその年1月1日における標準地の時価であり、標準価格とは、国土利用計画法施行令に基づき、都道府県が評価をしたその年の7月1日時点における基準地の時価です。

これらの公示価格等は不動産鑑定士による不動産鑑定評価額を基に決定されます。

(1) 情報提供元・情報源

(2) 信頼度

公示価格等は、各種の公的評価において「適正時価」として認められており、公示価格や基準価格を時価でないものとして取り扱うことはできません。

相続税や固定資産税の財産評価においては、この公示価格等を基準として評価をすることとなっていますが、課税の安全性を考慮し、相続税評価においては公示価格等の8割相当額、固定資産税評価においては公示価格等の7割相当額となるように評価されます。

(3) 留意点

都心と地方における公示価格と適正時価との逆転現象
都心と地方における公示価格と適正時価との逆転現象

地価公示は、公的には時価を表示する信頼性の高い価格と認識されていますが、不動産鑑定士の目線からすると、次のような理由から地価公示等が時価と乖離しており、特に地方では地価公示に近い価格で取引されている取引事例は非常に少ない状況にあり、適正時価とは言えないのではないかと感じています。

  1. 地価公示の評価業務は、競争入札方式の導入などにより、薄利な仕事となっているため、丁寧で精緻な評価をしている人が少ない。
  2. 地価公示や地価調査は「単価」というより、「変動率」の意味合いが強いため、評価額を下げづらい。
  3. そもそも取引がほとんど行われていないため、適切に評価を行うために必要な取引事例がない。
阿部博行
代表者

現に私が最近評価した物件のある地方都市では、ほとんどの取引が公示価格の50%~70%程度の水準にあるにも関わらず、公示価格は高い水準のまま維持されていました。
不思議に思い、公示価格の算出過程を見ると、取引事例の中でも高額な事例を採用していたり、最近の事例ではなく古い事例を採用しているなど、適正な評価に疑念を抱かざるを得ないものが多く見られました。

6.固定資産税評価額・相続税評価額

地価公示等と相続税評価額等との関係
地価公示等と相続税評価額等との関係

固定資産税評価額は公示価格等の7割程度、相続税評価額は公示価格等の8割程度となるように定められます。

(1) 情報提供元・情報源

  • 固定資産税評価額・・・課税明細書や固定資産評価証明書
  • 相続税評価額・・・財産評価基準に従い納税者自身が自主計算

(2) 留意点

相続税財産評価においては、財産評価基本通達に従って評価された金額は、特段の事情の無い限り「時価」であるものとして取り扱われます。

一方、固定資産税評価額は、制度上も相続税評価額の0.7÷0.8=87.5%となるように評価されていることから、固定資産税評価額をもって相続税の財産評価上の時価として取り扱うことはできません。