一括譲渡方式とは、不動産オーナーが所有する土地及び建物を資産管理会社に譲渡する方式をいいます。資産管理会社を活用したスキームとしては最も節税効果は高いものの、土地に含み益がある場合は不動産に譲渡所得税が課税されるため注意が必要です。
この記事では、一括譲渡方式の仕組みや内容、メリット・デメリット、節税効果などを説明します。
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目次
1.不動産所有会社の仕組み
(1) 不動産所有会社とは?
不動産所有会社(一括譲渡方式)とは、土地と建物を不動産オーナーから資産管理会社へ移転し、不動産をオーナーから切り離すタイプの資産管理会社のことをいいます。
一括譲渡方式の場合、不動産をオーナーから完全に切り離すことができるため、①所得分散効果が高く、②税務リスクも低く、③運営が容易であるというメリットがあります。
一方、一括譲渡方式によると、①初期コストが高く、②スキーム実行のハードルが高く、③短期的には相続税評価額が増加するなどのデメリットもあります。また、現物出資による場合は、資本金等の増加により法人住民税の負担が大きくなるなど、かえって増税となる可能性もあります。
(2) 不動産所有会社のお金の流れ
不動産所有会社は、テナント(入居者)より家賃を受け取り、これを源泉に使用人給与、役員報酬、配当金の支払いを行い、余剰資金があれば会社に留保します。
2.不動産所有会社の組成方法
不動産オーナーが自己の所有する不動産を元手に、一括譲渡方式の資産管理会社(不動産所有会社)を組成する方法には、大きく「現物出資」と「売却」の2つの方法があります。
比較項目 | 現物出資 | 売却 |
---|---|---|
組成時の現金預金の蓄え | 不要 | 金融機関からの借入の場合は不要 |
資本金等の額 | 増加する | – |
所得分散効果 | 〇 | 〇 |
相続税評価額の低減効果 | 3年を経過すると下がる | 短期的には逆に上昇するが、長期的には大きく下がる |
実行の難易度 | 普通 | 高い |
実行費用(初期コスト) | 高い | やや高い |
対策期間 | 中期的(3~5年) | 長期的(10年程度) |
(1) 現物出資による方法
一つ目の方法は、不動産オーナーが所有する土地及び建物を「現物出資」により資産管理会社に移す方法です。
メリット
- 金融機関から借入れをすることができない場合であってもスキームの実行ができます。
- 不動産から株式へと資産の種類が変更されることで、不動産オーナーの相続税評価額が下がります。実行時から3年が経過すると大きく評価額が下がります。
デメリット
- 法人住民税の均等割が高額となります。
- 中小企業者等の税制優遇措置を受けれない可能性があります。
- 実行に当たり、税理士等による証明が必要となり、実行難易度が高くなります。
- 賃料収入の蓄積により株価が上昇し、不動産オーナーの相続税評価額が上昇します。
(2) 売却による方法
二つ目の方法は、不動産オーナーが所有する土地・建物のうち、建物のみ「売却」という形で会社に移す方法です。
メリット
- 不動産会社の資本金等の額を増加させずに不動産を会社に移転させることができます。
- 法人住民税の額が上がりません。
- 対価として受け取る現金や未収金が解消された場合、長期的には大きく相続税評価額が下がります。
デメリット
- 不動産オーナーの資産が不動産から現金預金(又は未収金)へと資産の種類が変更されることで、相続税評価額が逆に高くなります。
- 相続税評価額が下がるまでに時間がかかります。
3.一括譲渡方式による場合のメリット・デメリット
資産管理会社として「一括譲渡方式」を選択することのメリット・デメリットを列挙すると次のようになります。
(1) 一括譲渡方式のメリット
- 所得分散効果が高い点
- 長期的な相続税の節税効果が高い点
- 運営管理が容易である点
(2) 一括譲渡方式のデメリット
- 実行スキームの難易度が高い点
- 初期コストが大くかかる点
4.一括譲渡方式が向いている方
資産管理会社として「一括譲渡方式」が向いている方は、次の(1)~(3)に該当する方です。特に(3)は必須となります。
- 不動産所得が1,200万円超の方
- 家族に不動産管理やリース業務に関するノウハウが無い方
- 予想される相続まで5年以上ある方
(1) 不動産所得が1,200万円超の方
個人と法人の所得に応じた限界税率の差は次のグラフのようなイメージになりますが、不動産所有会社の場合は初期投資が100万円以上はかかりますので、不動産所得が1,200万円を超える所得のある方が対象となってきます。
(2) 家族に不動産管理ノウハウが無い方
一括譲渡方式の場合、法人の主たる業務は「不動産賃貸」となるため、不動産の維持管理を外部に委託したとしても、利益が出ますので、これを元手に家族へ所得分散が可能です。
不動産管理方式やサブリース方式の場合は、不動産の運営管理やリース業務に対するノウハウや経験が必要となりますが、一括譲渡方式の場合は基本的にこれらの知識は不要となり、家族が会社に参加するハードルが低くなり、また、所得分散に対する税務リスクが低くなります。
(3) 予想される相続まで5年以上ある方
一括譲渡方式の場合、実行してから3年間は相続税の節税効果はありません。むしろ、最初の3年間は相続税評価額が上昇するため、増税となる可能性が高いです。
また、売却による場合は、対価として受け取る現金や未収金を費消したり、他の非課税規定の適用を受ける資産(例えば保険金)などに変換しない場合には、相続税評価額が上昇します。
また、一括譲渡方式では、初期コストがそれなりにかかるため、5年程度経たないと大きな節税効果を生まないケースが多いでしょう。
5.まとめ
資産管理会社として不動産所有会社(一括譲渡方式)を利用する場合は、所得分散効果が高く、また、運営管理も容易で、長期的な相続税節税効果が高い点が大きなメリットです。
一方、一括譲渡方式を上手に設立するには、実行時の不動産の適正時価の把握や、将来の精緻なシミュレーションが必要となってくるため、実行の難易度は高く、また、他のスキームよりも実行費用が高くなります。
これらのメリット・デメリットを理解した上で、組成する適切な資産管理会社を組成していく必要があります。弊所では、税理士・不動産鑑定士・行政書士のトリプルライセンサーが代表をしているため、ほとんど全ての実行スキームを単独で行うことができ、また、深い知識と豊富な経験があります。
どうぞ、一括譲渡方式による資産管理会社の設立をご検討の方は弊所にご相談ください。
相続タックス総合事務所の代表は、大手資産税税理士事務所と大手不動産鑑定会社の両方で、計15年の経験を積んだ、この業界でも珍しい税務と鑑定評価の両方の実務経験がある税理士・不動産鑑定士です。
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