利用価値が著しく低下している宅地の評価

2021年9月4日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

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利用価値が著しく低下している宅地の評価

利用価値が著しく低下している宅地とは、騒音や臭気、忌み地等を原因として、その土地の利用価値が著しく低下していると認められる宅地をいいます。

相続税の土地評価においては、利用価値が著しく低下している宅地に該当する場合には10%の評価減が認められています。

ただし、過去に私が評価をした利用価値が著しく低下している宅地については、10%を遥かに超える減価が生じているものが大半でした。したがって、個人的には10%の評価減をするよりも、不動産鑑定評価等の他の評価方法を検討すべきと考えています。

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目次

1.利用価値が著しく低下している宅地とは?

利用価値が著しく低下している宅地の例
利用価値が著しく低下している宅地の例

利用価値が著しく低下している宅地とは、次のような理由により、その宅地としての利用価値が著しく低下しており、その事情が路線価や倍率に反映されていない場合に、個々の減価項目につき10%の評価減を認めるものです。

  • 道路との間にある高低差がその周辺土地と比べて著しい場合のその宅地
  • 地盤の凹凸が著しい宅地
  • 震動の著しい宅地
  • 騒音の著しい宅地
  • 周囲の建物の影響により日照が著しく阻害されている宅地
  • 忌み地(墓地等)に隣接する宅地

なお、上記の要因が複数ある場合には、10%の評価減を重複することが実務上認められています。したがって、例えば震動が激しく、かつ、道路との間の高低差が甚だしい場合には20%の評価減が検討されます。

利用価値が著しく低下している宅地の評価

次のようにその利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて、著しく低下していると認められるものの価額は、その宅地について利用価値が低下していないものとして評価した場合の価額から、利用価値が低下していると認められる部分の面積に対応する価額に10%を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することができます。

  1. 道路より高い位置にある宅地又は低い位置にある宅地で、その付近にある宅地に比べて著しく高低差のあるもの
  2. 地盤に甚だしい凹凸のある宅地
  3. 震動の甚だしい宅地
  4. ①から③までの宅地以外の宅地で、騒音、日照阻害(建築基準法第56条の2に定める日影時間を超える時間の日照阻害のあるものとします。)、臭気、忌み等により、その取引金額に影響を受けると認められるもの

また、宅地比準方式によって評価する農地又は山林について、その農地又は山林を宅地に転用する場合において、造成費用を投下してもなお宅地としての利用価値が付近にある他の宅地の利用状況からみて著しく低下していると認められる部分を有するものについても同様です。

ただし、路線価又は固定資産税評価額又は倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません。

タックスアンサーNo.4617 国税庁

2.実務上の対応                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               

実務上は、次の手順により評価をします。

  1. 減価の事実の確認
    現地調査及び聞き込み調査を行い、市場において減価として捉えられているか否かを確認します。
  2. 相続税路線価等へ織り込み済みか否かの確認
    路線価地域であれば「路線価」にその減価要因が反映されているか、倍率地域であれば「固定資産税評価額」にその減価が反映されているかを確認します。また、周辺不動産を確認し、当該事情が評価対象地特有のものか否かも確認します。
  3. 減価が生じている範囲の確定
    減価が評価対象地のどの部分に生じているのかを判定し、減価の範囲を確定します。
  4. 評価額へ反映
    上記より、利用価値が著しく低下しているようであれば、自用地としての価額に対し10%の評価減を考慮して評価をします。

過去の裁決・判決からの考察

過去の裁決や判決の内容を踏まえると、その減価要因が路線価等に織り込み済みか否か、が可否決定の重要ポイントとなっています。

減価要因認められた例認められなかった例(否認理由)
高低差・道路や付近の宅地より2m以上低い
・車両の進入が不可能な高低差
・1.5m-2.6mの高低差のある店舗敷地
・70cmの高低差のある住宅地
(周辺地と比較して価値低下が生じていない)
凹凸地盤にはなはだしい凹凸のある斜面
忌み地・元墓地
・墓地周辺
・下水処理場周辺(路線価に織り込み済み)
・伝染病の病棟周辺(必ずしも減価が生じていない)
・暴力団事務所周辺(路線価に織り込み済み)
・ごみ処理跡地(路線価に織り込み済み)
騒音・震動・新幹線の高架下
・鉄道路線の隣接地であり、路線価に織り込まれていない
・鉄道路線の隣接地(路線価に織り込み済み)
日照・眺望住宅地
その他歩道橋による出入りの阻害・狭小宅地(公示地も狭小のため)
・隣接地に朽廃した危険建物が存在(著しい減価ではない)
臭気・競馬厩舎周辺(周囲にも住宅があるため)
利用制限・高圧線化土地(調区内山林であり、阻害の程度が弱い)
過去の裁決事例・判決による可否決定のまとめ

3.不動産鑑定評価の検討                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              

当初申告では、特殊性のある不動産については不動産鑑定評価を利用した申告が有効です。忌み地周辺土地は一般的に30%程度の減価が生じていることが経験的に多いため、10%減の評価では不十分といえます。

また、道路まで距離の長い無道路地や路地状敷地のある袋地、土壌汚染や埋蔵文化財、地下埋設物が存する土地、地代の低い底地(貸宅地)などは不動産市場では相当に低い価格で取引されていますが、相続税の土地評価では実態と乖離した高い評価額となる傾向にあります。

したがって、そのような特殊な土地の評価については、財産評価基本通達による評価ではなく、不動産鑑定評価によることが検討されます。

相続タックス総合事務所の代表は、大手資産税税理士事務所と大手不動産鑑定会社の両方で、計15年の経験を積んだ、この業界でも珍しい税務と鑑定評価の両方の実務経験がある税理士・不動産鑑定士です。

売却不動産の取得費が不明な場合、不動産の収益力の向上・改善、節税対策、事業承継対策、遺留分対策など、不動産に関する様々なアドバイスをすることができます。