造成中の宅地の評価

2021年9月9日
阿部 博行

阿部 博行

税理士・不動産鑑定士・行政書士・FP1級技能士・応用情報技術者

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造成中の宅地の評価

相続開始時点において宅地造成工事が行われている場合には、造成工事前の地目の価額に既に投下した資本相当額を加算することで評価します。

この記事では、造成中の宅地の評価について解説をします。

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1.造成中の宅地の評価

宅地造成が行われている農地の例(造成中の宅地)
宅地造成が行われている農地の例(造成中の宅地)

造成中の宅地の価額は、その土地の造成工事着手直前の地目により評価した課税時期における価額に、その宅地の造成に係る費用現価100分の80に相当する金額を加算した金額によって評価します。

造成中の宅地の価額 = 工事前の地目の価額 + 造成費相当額 × 80%

ここで、費用現価とは、課税時期までに投下した費用の額を課税時期の価額(現在価値)に引き直した額の合計額をいいます。工事費用を支払ったのが最近であれば特に現在価値へ補正する必要はありませんが、1年以上前に支払っているような場合には、原材料費や人件費等の変動を考慮して、現在価値へ修正することが検討されます。

なお、国税庁の質疑応答事例では、課税時期までに投下した費用として次の工事費用を列挙していますが、これ以外にも整地費用や地盤改良費用、上下水道管設置費用なども考慮すべきでしょう。

  1. 埋立て費
  2. 土盛り費
  3. 土止め費
  4. 地ならし費

ちなみに、アスファルト舗装やコンクリート舗装などの舗装費用は「構築物」として資産計上しますので注意します。

2.造成中の宅地の評価の計算例

宅地造成工事が行われている土地の計算例
宅地造成工事が行われている土地の計算例

上の図の土地は、埼玉県内にある市街地農地で、相続開始時点において宅地造成工事が行われている場合の例です。当該宅地造成工事に関する費用と進捗状況は次の通りであり、工事費用の10%を着手金として、40%を中間金として、50%を完了金として支払われるものとし、価格時点においては着手金(6,240,200円)のみを支払っている状況にあるものとします。

なお、着手金支払い時から課税時期までの間に特段の物価変動はないものとします。

種類備考採用単価費用進捗率
整地工事道路部分15,000円/㎡10,500,000円0%
整地工事 道路以外の部分500円/㎡1,778,000円0%
切土工事高さ0.8m軟弱地盤の撤去1,000円/㎡3,404,800円100%
盛土工事高さ1.2mの土砂を搬入6,000円/㎥30,643,200円10%
土留め工事L型擁壁・1.2m高さ40,000円/㎡12,576,000円0%
地盤改良工事実施しない
上下水道管等引き込み工事上下水道・ガス35,000円/m3,500,000円0%
合計62,402,000円15%
宅地造成工事に関する費用の例
  1. 市街地農地の宅地としての価額
    イ)奥行価格補正後の路線価
     正面路線価(28千円/㎡)×奥行価格補正率(0.92)=25,760円/㎡
    ロ)奥行長大補正後の路線価
     イ(25,760円/㎡)×奥行長大補正率(0.98)=25,244円/㎡
    ハ)規模格差補正後の路線価
     ロ(25,244円/㎡)×規模格差補正率(0.72)≒18,175円/㎡
     ∵(4,256㎡×0.85+225)÷4,256×0.8=0.722… → 0.72
  2. 市街地農地としての価額
    イ)宅地造成工事費
     ㋑整地費 700円/㎡×4,256㎡=2,979,200円
     ㋺土盛費 7,000円/㎡×4,256㎡×1.2m=35,750,400円
     ㋩土止費 75,500円/㎡×262m×1.2m=23,737,200円
     ㋥㋑+㋺+㋩=62,466,800円
     ㋭㋥÷4,256㎡≒14,677円/㎡
    ロ)市街地農地としての価額
     (①-②)×4,256㎡=14,887,488円
  3. 造成中の宅地としての価額
    ②+6,240,200円(着手金)×80%=19,879,648円

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