相続タックス総合事務所は、不動産オーナー様に特化した税理士・不動産鑑定士・行政書士事務所・不動産販売の総合事務所です。
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目次
1.貸宅地
貸宅地とは、相続税の財産評価における土地の利用区分の1つであり、土地の上に次の権利が存する場合におけるその宅地をいいます。
- 地上権
民法265条に規定する地上権のうち、区分地上権及び借地借家法に規定する借地権に該当するものを除いたものをいいます。橋やダム、陸橋などの工作物を所有するために設定されます。 - 区分地上権
民法269条の2に規定する地下又は空間に上下の範囲を定めて設定される地上権をいいます。地下鉄や高速道路などの工作物を地中又は地上の一定層において所有するために設定されます。 - 区分地上権に準ずる地役権
特別高圧架空電線の架設、高圧のガスを通ずる導管の敷設、飛行場、建築物の建築その他の目的のため、地下又は空間について上下の範囲を定めて設定された地役権で、建造物の設置を制限するものをいいます。 - 借地権
建物の所有を目的とした地上権又は土地の賃借権をいい、定期借地権等に該当するものを除きます。 - 定期借地権等
借地借家法に規定する定期借地権、事業用定期借地権等、建物譲渡特約付借地権及び一時使用目的の借地権をいいます。
貸宅地と似たものに「底地」がありますが、底地は借地権が付着している宅地に限定されていますので「貸宅地=底地」ではありません。
2.貸宅地の価格
貸宅地は大きく、(1)市場性のある貸宅地と、(2)市場性の無い貸宅地に大別することができます。
市場性のある貸宅地は、「地代徴収権」と「更地復帰期待権」を基に価格が形成され、市場性の無い貸宅地は、更地としての利用を阻害する程度を考慮した残価的な価値に基づき価格が形成されます。
(1) 市場性のある貸宅地の価格
貸宅地の所有者は賃貸借契約等により土地の使用収益が制約されているため、専ら地代徴収権と更地復帰期待権を考慮して取引に入ります。地代水準(地代利回り)が高ければ高いほど、更地復帰の可能性が高ければ高いほど、貸宅地の価格は高くなります。
このように地代徴収権や更地復帰期待権を考慮して取引が行われる貸宅地の代表例が借地権や定期借地権等が設定された土地です。
(2) 市場性の無い貸宅地の価格
貸宅地の中には地代が低いもの、地代が支払いがないもの、当分の間更地復帰が見込めないもの、そもそも更地としての需要が無いものなどがあります。このような土地については地代徴収権や更地復帰期待権を考慮した価格形成よりも、専ら更地価格からその阻害の程度を考慮した残価的な価格で取引がなされる傾向にあります。
このように残価的な価値を考慮して取引される貸宅地には、地上権や区分地上権、地役権などが設定された土地があります。
3.貸宅地の評価方法
(1) 貸宅地の評価方法
貸宅地の評価額は、基本的には自用地としての価額からその設定されている権利の価額を控除して求めますが、その設定されている権利事に微妙にその評価方法が異なるため、具体的な評価方法は次の記事を参照してください。
(2) 自用地としての価額
貸宅地や底地の評価においては「自用地としての価額」を基に評価しますが、この「自用地としての価額」とは、路線価方式による評価又は倍率方式による評価により求めた評価額に、次の評価補正をした価額をいいます。
- 大規模工場用地の評価
- 私道の用に供されている宅地の評価
- 土地区画整理事業施行中の宅地の評価
- セットバックを必要とする宅地の評価
- 都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価
- 文化財建造物である家屋の敷地の用に供されている宅地の評価
なお、貸宅地の評価における自用地としての価額では、余剰容積率の移転がある場合の宅地の評価は反映させませんので注意します。
4.相続税評価額と時価との乖離
借地権が設定された土地(貸宅地)については、土地の効用が十分に発揮されていない場合には、相続税評価額と時価とが乖離する傾向にあります。
(1) 相続税評価額の前提
相続税評価では、原則として次の等式が成立することを前提に、借地権価額と貸宅地価額が評価されます。
(2) 最有効使用が阻害された土地の実勢価格(時価)
一方、実際の不動産市場では、借地権が付着した宅地(底地)は、主として地代徴収権と更地復帰期待権を基に取引が行われるため、地代水準が低ければ市場価格は当然に低くなります。
(3) 時価と相続税評価額の乖離
例えば、次の図のように10階以上のオフィスビルが建ち並ぶ商業地域に2階建ての戸建住宅(借地権付建物)が建っているとします。
このような場合であっても、相続税の財産評価における当該土地の貸宅地の価額は、土地の最有効使用であるオフィスビルを前提とした自用地価額を基に評価されますが、実際の不動産市場では利用効率の悪い、低い地代収入に基づく価格により取引が行われるため、仮にこの貸宅地を売却したとしても相続税の財産評価における貸宅地価額よりも低い価格でしか売却することができません。
つまり、相続税評価額による貸宅地価額>>実際の貸宅地の取引価額となる可能性があり、場合によっては「財産評価基本通達第6項」の適用を検討する必要がでてきます。
Ⅳ 最有効使用の原則
不動産鑑定評価基準(PDF)|国土交通省HP
不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。
なお、ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意すべきである。
相続タックス総合事務所の代表は、大手資産税税理士事務所と大手不動産鑑定会社の両方で、計15年の経験を積んだ、この業界でも珍しい税務と鑑定評価の両方の実務経験がある税理士・不動産鑑定士です。
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